最終更新日 2022年6月19日
「貸借対照表(バランスシート)ってなんとなくは見ているけど、具体的にどう読むべきなのかわからない」というような方向けに本記事は執筆しました。
確かに損益計算書と比べるとわかりにくいですよね!(私も銀行員一年目の時はそう感じてました)
しかし金融機関はかなりしっかり貸借対照表を確認しているので、説明出来ないと『この経営者大丈夫かな?』という印象を持たれてしまいます。
最近お会いする経営者の方々の中で、『実は借入残高ぐらいしか、自分では見ていないのだろうな』と思われる方が多かったので、今回は噛み砕いてご説明したいと思います。
※初学者向けなので、財務に明るい方は読み飛ばし下さい
貸借対照表とは?
損益計算書が直近一年の説明書と言われるのに対し、貸借対照表は過去から現在までの変遷が詰まった説明書とも言えます。
読み解くと何が分かるのかを、簡単に誤解をおそれずに言うと
『これまでどうやってお金を集めてきて、現在そのお金がどんな状態になっているのか』
が分かります。

貸借対照表は簡単に書くと上記のように分かれてますが、私も銀行員になりたての頃は
・なんでいいイメージがある『純資産』と『負債』が同じサイド(貸方)にあるのだろう?
・『資産』と『純資産』って何で分けられているのだろう?
などと感じ、とても分かりにくいな・・覚えるしかないのか?と思っていました。
しかしある上司が『例外などを特に考えず、とても簡単にいえばこんな感じ』と以下のように教えてくれて、かなりしっくりきた覚えがあります。
負債・・・・事業の為に集めてきたお金のうち、返済しないといけないものの内訳
純資産・・・事業の為に集めてきたお金のうち、自分で用意したものなど基本返済せずにいいものの内訳
資産・・・・集めてきたお金が、今どのように姿を変えているかの内訳
(機械を買ってお金が機械になったり、商品を仕入れてお金が商品になっていたり)
個別の勘定科目がどうという話の前に、このくらいの大雑把な認識から持てていると、会社の状態をざっくり直ぐに把握したい時に大変便利です。
どうやって読むの?
結論から言うと
『右から左に見る!』
この見方をし始めてから、私としては貸借対照表からビジネスをイメージしやすくなってきたので、オススメです。
目線としては以下の図のような格好ですね。

先ほどの負債・純資産・資産の説明がこの順であったのも、貸借対照表の右(貸方)から説明した方が
『お金を集めて、仕入れる・購入する』
という一般的な商流を思い浮かべながら見ることが出来て分かりやすいかと思ったからです。
日本人はこのような表を見た時に、概ね左から目線を送ってしまうと思うのですが(昔の私はそうでした)、これだと、かつての私のように『各勘定科目から会社の状況を読み取りにくい』と感じるようであれば、是非右から見ることをお試しください。
右サイド(貸方)を見ながら、『金融機関からいくら借りた?』『自己資金はいくら集めて始めた?』などと思い起こし、左サイド(借方)に目を移し『それをどんな使い方した?』と想像や思い出しながら見る癖をつけると、会社のお金の流れの実態を把握しやすくなりますよ!
何を確認するべき?
我々中小企業診断士のようなコンサルタントや金融機関が貸借対照表から何を重点的にみているかといいますと、経営の『安全性』です。
安全性も短期的な安全性と長期的な安定性に分けて考えることが出来ます。
以下のような指標(他にもありますが一例です)を同業平均と比べたり、同社の前年数値と比べたりしてその会社の現状を捉えようとします。
流動比率(%)= 流動資産 ÷ 流動負債 × 100
※100%以上が必要で、200%近くあれば安全と言われています。
当座比率(%)= 当座資産 ÷ 流動負債 × 100
※100%以上が望ましいと言われています。
流動資産は左サイド(借方)上段の方に載っている、1年以内に現金化できる資産(現金・預金や売掛金、棚卸資産など)のことです。
※当座資産は流動資産から、棚卸資産を差し引いたものです。
流動負債は右サイド(貸方)上段の方に載っている、1年以内に返済しないといけない負債(買掛金や支払手形など)のことです。
ではなぜ100%以上が必要や望ましいのかと言うと、『流動負債の方が、流動資産や当座資産を上回ってしまうと支払いが滞り倒産してしまう可能性があるから』です。
一年以内に払わないといけない負債が、手元の現金化しやすい資産より多ければ、払えなくなってしまうのは当然ですよね。
こういったことは、是非経理担当任せにせず、経営層がご自身で把握することが会社の健康状態を把握する上で大事です。
固定長期適合率(%)= 固定資産 ÷( 自己資本 + 固定負債 )× 100
※100%以下が理想的とされています。
固定資産は左サイド(借方)下段の方に載っている、1年以内に現金化が難しい資産(土地や建物・機械設備など)です。
固定負債は右サイド(貸方)の中段に載っている、返済期日が一年以上先の負債(長期の銀行借入など)のことです。
自己資本は右サイド(貸方)下段の純資産のうち新株予約権と非支配株主持分を引いたものです。
なぜ100%を上回ってしまうと良くないのかといいますと、『現金化しにくい固定資産は、直ぐに返す必要のない資金(長期の借入や自分のお金)で賄うべきだから』です。
100%を上回るということは、機械や土地を買う資金を、短期で返さないといけない負債で賄ってしまっていることを意味します。
直ぐに返さないといけないお金であり、返済のために土地や建物を期日までに現金化することは難しいですよね?
実際は資金をやりくりして、すぐに倒産や支払い不能に陥るなどということは起きませんが、健全とは言えない経営状態なので、長い目で見て体質改善していく必要があります。
上記のような視点で経営層が貸借対照表を見られるようになると、経営を安定させる為に『短期的には何をすべきか?』『長期的には何をすべきか?』が見えてくることと思います。
最後に
今回は貸借対照表について、噛み砕いて説明しました。経営層のみならず経理や財務担当の新入社員の方が見ていただいても、部署のレベルアップにつながるかと思います。
社員や経営層向けの研修や、財務分析からの戦略立案についても当事務所では承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。