最終更新日 2024年6月29日  

新しい会社を設立した後に事業を作り上げて軌道に乗せていくためには、適切な資金調達戦略と投資戦略を立てることが成功への重要な要素となります。

今回は資金調達戦略に焦点をあてて解説します。
資金調達にはさまざまな方法がありますが、以下の3つの方法は一般的で効果的な手段です。

・デットファイナンス
・エクイティファイナンス
・補助金活用

この記事ではそれぞれの方法を詳しく説明し、利用が向いている事業者の特徴や利点と注意点を示します。

経営者として知らないといけないことではありますが、誰もフラットな目線でどの調達方法が自社に向いているのかは教えてくれません。

ぜひ本記事を参考に自社に最適な資金調達の方法を考えてみてください。

デットファイナンスとは?

デットファイナンス

デットファイナンスは、資金調達の方法として借り入れに頼る手段です。
企業の決算書上では、貸借対照表の負債(デット)の部に乗ってくるのでデットファイナンスという言い方をします。
具体的には、企業が主に銀行や信用金庫にような金融機関から(時に投資家から)借り入れを行い、一定期間後に元本と利息を返済することをイメージして貰うと良いかと思います。

デットファイナンスの種類

a. 銀行融資

銀行融資は一般的に低い利率で提供されるため、資金を必要とする際に一般的な選択肢です。銀行からの借入については、県の制度融資や市の制度融資、保証協会の制度などを組み合わせることで様々な選択肢が出てきます。

b. ビジネスローン

銀行以外の金融機関やオンラインの貸金業者からビジネスローンを利用することもできます。プロセスが迅速であり、資金調達が比較的簡単なため、新しい企業にとって魅力的な選択肢ですが、利息率が高いことが多く、利用前には資金繰りについてしっかり考えるべきです。考えなしに安易に利用しないように注意が必要です。

c. 債券発行

企業は債券を発行し、一般の投資家から資金を調達することができます。企業規模がある程度の大きさになってくると私募債と呼ばれる債権発行によって調達するこの手法が使えるようになってきます。
債券は一定期間後に元本と利息を返済することが一般的です。特に大規模な資金調達に適している方法です。

デットファイナンスのメリット

a. 経営権の維持

デットファイナンスを利用する場合、株式を資金の出し手に渡す訳ではないので、企業の経営権の一部が借り入れた金融機関や投資家に移さずに資金調達をすることが出来ます。これは、起業家や経営陣が会社の意思決定に対して独立性を保持できる利点となります。

b. 利息控除

デットファイナンスでは、支払った利息を法人税の経費として申告することができます。これにより、企業の税負担を軽減することができます。

c. 借り入れ先との関係

デットファイナンスを利用することで、金融機関との関係を構築していくことができます。金融機関とのお付き合いによって得られる情報は、経営に役立つ情報や地場の企業紹介など多岐にわたります。良好な信用履歴を築くことで、将来の借り入れや信用条件の向上にもつながるでしょう。

デットファイナンスのデメリット

a. 返済リスク

借り入れた資金は将来的に返済しなければなりません。ビジネスが予想よりもうまくいかなかった場合や、経済的な厳しい状況に直面した際に、返済が困難になる可能性があります。

b. 担保や保証人

銀行融資を受ける場合、担保や保証人が必要な場合があります。担保や保証人を提供することで、借り手の信用を補完することが求められます。

c. 利息負担

借り入れた資金に対しては利息が発生します。高い利息率や長期間の借入れによって、利息負担が増加する可能性があるため、適切な返済計画を策定することが重要です。

デットファイナンスが向いている事業者の特徴

返済が必要な資金調達形態であるため、ある程度利益が出せる見込みが立った事業者には、適した資金調達形態であるといえます。

堅実に利益を出している企業を事業承継で引き継いだ方や、ある程度利益を出していける目処がたったベンチャー企業を運営する方にはお勧めできる調達手法です。

最近は金融機関もベンチャー融資に積極的になってきましたが、製品やサービス開発中で売れるかまだ分からないというような事業者が利用することは、注意する必要があります。返せなくなった時には、保証人の代表者の個人資産を使って返済する必要が出てきて、ご自身のライフプランに大きく影響を及ぼす可能性などがあります。

調達検討時には、利害関係にない、資金調達に詳しく金融機関サイドの考え方を理解している専門家(中小企業診断士又は金融機関勤務経験がある経営コンサルタントがお勧めです)の意見を聞いておくことが望ましいです。下手を打つと会社の存続に影響する場合があるので、本分野においては多少お金をかけてでも専門家の伴走支援を受けることをおすすめします。

税理士先生の中には資金調達に詳しい方もいらっしゃいますが、あくまで税務の専門家なのでそうでない方も多いです。顧問税理士へ相談される場合は、その方が資金調達に詳しいのかご自身で見極めてからご相談ください。

当事務所以外にも、銀行出身などで資金調達に長けた中小企業診断士や経営コンサルタントはネットで検索すれば出てきますので、取り返しのつかない大損をする前に、多少のコストを払ってでも相談しておくことをお勧めします

エクイティファイナンスとは?

エクイティファイナンスは、株式発行によって資金を調達する方法です。
創業代表者などが持っている株式の持分を、投資家に譲り渡す代わりに資金を出してもらうケースが一般的です。
企業の決算書上では、貸借対照表の純資産(エクイティ)の部に乗ってくるので、エクイティファイナンスという言い方をします。

エクイティファイナンスの調達先種類

a. エンジェル投資家

個人の富裕層や成功した起業家がスタートアップ企業に投資することで、資金調達を支援します。

b. ベンチャーキャピタル(VC)

ベンチャーキャピタルファンドは成長が期待されるスタートアップに投資するファンドです。
各ファンドごとに投資方針や、投資対象企業のフェーズなどを定めています。事前に調べてから、コンタクトをするようにしましょう。

c. 株式公開(IPO)

企業が株式を一般に公開し、証券取引所で売買可能となることで、株式市場から資金を調達する方法です。企業規模の大きさ、成長性を確保できて初めて可能になります。IPOに際しては、様々な審査や事前に大規模な準備作業を伴います。

エクイティファイナンスのメリット

エクイティファイナンスの利点は、多くの場合返済の必要がないことと、投資家からの専門的な支援やネットワークへのアクセスが期待できる点が挙げられます。

また資金の出し手は、譲り受けた株式の値上り益を目当てとして出資してくれるパターンが多いです。そのため現時点で黒字化していなくても、事業の成長性を説明できれば、企業価値の上昇を期待され出資して貰える可能性がある点はデットファイナンスではあまりない、エクイティファイナンス特有のメリットと言えます。

エクイティファイナンスのデメリット

出資を受ける代償として、譲り渡す株式は企業の経営権です。そのため、譲り渡す持分によっては、出資者が経営に口出す権利を持つことになります。

創業経営者が株式を100%持つ時と違い、好きなように経営をハンドリング出来なくなる可能性は考慮しておく必要があります。口出しはされない場合でも、定期的に出資者に事業の状況について報告することは求められてきます。

また創業者経営者の持分が減るということは、IPOできた場合の創業者のキャピタルゲインも減るということを意味します。

上述の内容を考えると、エクイティファイナンスを行う時は、誰から調達するのか?/どのくらいの株式を譲り渡すのか?が非常に大事になってきます。

エクイティファイナンスが向いている事業者の特徴

現時点では、まだ黒字見込みが立っていない段階だが、今後の成長性があるベンチャー事業者にとっては最適な調達手法と言えます。

実際、IPOを目指す創業初期のベンチャー企業などはよくVCなどから、この形態での資金調達を行なっています。

補助金とは?

補助金は、国や地方自治体が様々な目的で企業への補助金のプログラムを用意しています。特定の業界やプロジェクト、設備投資への支援として数十万単位のものから数億単位のものまで幅広く提供されます。

知らないと全く利用できないため、補助金の知識が豊富な中小企業診断士などから定期的な情報を受けるなど、アンテナを張っておく必要があります。

代表的な補助金の種類

a. 政府(国)の補助金

産業や投資内容によって異なる、様々な種類の補助金が存在します。申請や審査プロセスが必要な場合もあるため、早めに情報収集が必要です。また金額が大きいものが多いのも政府補助金の特徴です。

b. 地方自治体の補助金

金額はあまり大きくないことが多いですが、地方によっては競争率が低く、応募要件さえ満たせば高い確率で採択してもらえるものもあります。

補助金活用のメリット

補助金の利点は、返済の必要がない点と、新しいアイデアやイノベーションの促進・投資ができる点です。

新しく始める取組みの為に必要な設備投資などの資金を援助する補助金が多く、リスクを抑えて新たな取り組みを始めることが可能になります。また応募に向けた事業計画を作成する段階で、事業の方向性を整理することもできます。

補助金活用のデメリット

補助金の申請プロセスは時間とリソースを要することがあります。特に金額の大きな補助金ほど、求められる事業計画書のボリュームは増えていく傾向にあります。

従業員数なども少なく、事業計画を整理するノウハウがないような事業者さんの場合は、中小企業診断士などの外部のリソースをうまく使いながら、補助金採択を目指すことも検討すると良いかと思います。

補助金活用が向いている事業者の特徴

現状を打破するために新しい取組みを検討していて、その為になにかしら投資が必要である事業者の場合は、補助金による調達と相性が良いと言えます。

また補助金は後払いになることが多いので、つなぎ資金として金融機関に協力を依頼する必要がある場面も出てきます。すでに金融機関との関係性が出来ている事業者であれば、より補助金は活用しやすくなります。

まとめ

新しい会社を設立する際には、デットファイナンス、エクイティファイナンス、補助金活用など、様々な資金調達方法があることをまずは知っておきましょう。銀行借入が全てではないですよ!

ご自身の会社にとって、どの資金調達手法が最適なのか、ぜひ本記事を参考に考えてみてください。

もしご自身で判断がつかなかったり、第三者専門家の意見を聞きたいというような場合は気軽に、当事務所の無料相談をご利用ください。


川元 芳晃(かわもと よしあき)

巣鴨コンサルティング代表。中小企業診断士(経営コンサルタントの国家資格)。 金融機関とベンチャー企業での経営企画/マーケティング部門での勤務経験から、中小・ベンチャー企業の資金調達/資金繰り改善/デジタルマーケティングを駆使した集客改善支援を得意とする。