最終更新日 2024年11月9日
中小企業診断士の川元です。
「人材が定着せず、後進の育成が全く進まない」
そんなお悩み抱えていませんか?
私が普段ご支援させていただいているお客様からこのようなお声をよくお聞きするので、今回は数多ある後進育成の進まない原因と対策手法の中で、当事務所として良いと考えるやり方を記します。
今回は中小企業向けに、あまり大きな人事論や抽象的な話しではなく、明日から着手できる小さく具体的なお話しを記します。
数多くある考え方のうちの一つとして、試してみていただけると幸いです。
若年層の社員が定着せず、社員の高齢化が進む会社の経営者様
後継者候補の社員が育たず、お悩みの経営者様
目次
若手人材を定着しない理由とは?
若年層の社員が定着しない限り、どれだけ人材育成の施策を行なっても辞めてしまい、後進育成が成就されることはありません。
まずは若手社員がなぜ辞めてしまうのかを的確に把握する必要があります。
多くの場合、退職する社員は本当の理由を会社には話してくれません。立つ鳥跡を濁さずの考え方で、当たり障りのない理由をつけて辞めてしまう場合が殆どです。(勿論そうでない場合もありますが)
言葉からではなく、社員の行動から類推するしか手段はないと心得て、以下のようなありがちな原因に当てはまっていないか見ていきましょう。
対応策は次の章で解説します!
社員の志向と会社が求めることのミスマッチ
例えば経理事務のスキルを伸ばしたくて働いている若手経理社員がいたとします。
その社員はいずれは複雑な税務や連結決算業務などの知見を深めたいと考えているにも関わらず、金融機関との折衝のために交渉スキルを身につけるよう、日々口酸っぱく叱責されたらどう感じるでしょうか?
自身のやりたいことや得意なことと、会社が求めることのミスマッチを感じ、すぐにスマホを取り出し自身のやりたいことをやらせてくれる職場や求人情報を探すことでしょう。
そして、若年層の社員が欲しい企業はゴマンと存在するため、その社員はすぐに次の職場を見つけ去ってしまいます。
金銭や労働時間等の待遇面の不満
情報が手に入りやすい現代においては、少しスマートフォンを触れば同業他社の給与水準や平均労働時間などの情報はすぐに手に入ってしまいます。
そのため、あまりに平均水準より悪い待遇を社員に強いていると、すぐに待遇の良い転職先を見つけて、あなたの会社を離れてしまいます。
そして、あなたの会社の経営陣の「この程度の能力の社員は、簡単に転職できないだろう」という見積もりは、人材不足の企業だらけの現代においては多くの場合外れます。(若年である又は多少のスキルがある場合、簡単に転職できてしまう場合が多いです。)
職場の人間関係の不満
「業績を上げるため」「人材を育成するため」出来なかった社員を強い言葉で詰めてしまうことはどうしてもあると思います。
しかし、詰める文化によって健全に事業成長を遂げている企業を私はあまり見たことがありません。
実際に詰められた社員は、「なぜ出来ないのか?」「なぜやらないのか?」と語気強く問われてもその理由を答えることはなく(答えられた側の怒りを更に買ってしまうことが分かっているので)、萎縮し「すみません」「以後気をつけます」以上の言葉を返してこないでしょう。
このコミュニケーションにより、事業の成長や人材の成長に資する部分があるでしょうか?
むしろ、社員が萎縮することで行動力が低下し、捌けるタスク量の減少を招きます。最悪の場合、よりマネージング能力の高い社員がいる企業への転職を考え、社員が離れてしまうこともあるでしょう。
詰めて辞められたとしても、入社希望者が大勢いるという人気企業であれば、このようなことを考えなくて良いですが、多くの中小企業はこのような会社ではありません。
入社してくれた社員を最大限に活かすべきであることを、心に留めておきましょう。
定着させて育成する方法とは?
バランスのよい業務設計
社員の志向と会社の要望のミスマッチに対する対応策としては、本音を話しやすい雰囲気を作った上で、社員と対話の時間を設け「何ができる人材になりたいか」本人の志向を聞くことから始めましょう。
その上で、「会社として出来るようになってほしいこと」と「本人の志向することをやらせること」をバランスよく織り交ぜて業務にあたってもらう設計をすることが有効策です。
当然会社運営に必要な「会社として出来るようになってほしいこと」は一定水準でやらせる必要があります。
一方で「本人の志向することをやらせる」部分は、会社としてのメリットにならないように感じられるかもしれませんが、実際には多くの場合において会社に大きなメリットをもたらします。
私が多くの企業と関わらせていただいた中で、お金をもたらしているのは、従業員各人が得意分野を伸ばしその道のプロとなった結果である場合が多く、苦手なことを人並みにできるようになった結果ではありません。
例えば、営業が得意でずっと営業をやっていたい人間を営業に集中させると、勤務後も営業のスキルを伸ばすための学習を進んで行い、結果として会社にとって代え難い営業のプロ人材として多くのお金をもたらします。
一方で、先のような人材に営業に集中させず、事務作業能力を高めるように言っても、自律的に学習する姿勢をみせることは稀で、勤務時間の中で人並みにその事務作業能力を上げたとしてもそれが会社の利益に繋がることは多くの場合ありません。
上記の内容を心得て、「会社のやらせたいこと」と「本人のやりたいこと」の重なる部分ができるだけ最大化するように、適切な社員に適切な能力を身につけさせることを意識して、仕事をアサインすることが大切です。
「会社の目標」と「達成時の見返り」の明示
対応策として一番手っ取り早いのは、同業他社の待遇を調べてその水準くらいに引き上げることですが、会社の財務上そう簡単ではない会社もあると思います。
その場合、現状あまり良い待遇を与えられていないことを明確に認めた上で、ここで頑張って「定量的にこの水準の業績に会社の状況を持ち込めたら」「具体的にこのくらいの待遇改善を行う」ということを経営陣から説くことが重要です。
約束した以上、業績改善後に待遇改善を行うことは不可欠です。
しかし社員が辞めてしまった場合の「捌けない仕事が発生し減少する売上(将来発生する分の売上を含む)」や「新たな人材を採用するコストや教育するコスト」を考えると安上がりに済むことが多いです。
コミュニケーション方法の変更
対応策としては、「経営陣や熟練社員」と「育成される社員」の間のコミュニケーション方法を変えるしかありません。
具体的には、「なぜ出来なかったのかを一緒に考えよう」「その上で、出来るようにするために明日から何をしよう」という会話をしていくことが大切です。
この会話をするときに注意すべき点として、以下二点が挙げられます。
- なるべく育成される側の社員が本音を話しやすい雰囲気を作って会話すること
- 他の社員と比較するような会話はせず、過去のその社員の状態との比較で会話をすること
本音を話しにくい雰囲気では、結局「自分の努力不足だったので、明日からもっと頑張ります・もっと長く働きます」のような本質的でない会話で終始してしまいます。
過去のその社員との比較において、「これ出来るようになったな」というような言葉を上席や経営陣から掛けられることは、自分の成長を心から会社が願ってくれていることの理解に繋がり、結果として会社への忠誠心向上に繋がるためオススメです。
まとめ
今回の記事ではよく見受けられるパターンをご紹介しましたが、人事や組織の課題は企業によってまちまちです。
自社の人事・組織において本当の課題がどこにありそうなのか、深く分析することが不可欠です。
もし経営者様自身が問題認識はあるが、本当の課題の抽出が多忙で出来ていないなどの状況であれば、中小企業の相談に多数乗ってきた当事務所にご相談ください。
中小企業様やベンチャー企業様でも、人手不足の昨今では経営コンサルタントを上手に使って、経営に役立てている企業様は数多く存在します。
「中小企業だからコンサルの活用とは無縁だ」と初めから諦めてしまわず、ぜひ調べて上手に使ってみてください。
ご検討の際に、当事務所も選択肢の一つとして入れていただたら、非常にありがたく思います。
在籍する中小企業診断士が、全力で経営者様の希望実現に向けサポートいたします。