最終更新日 2024年9月15日  

中小企業診断士の川元です。

「くるみん」や「えるぼし」について聞いたことはあるが、実際にどんなものなのか詳細に知っていますでしょうか?

「くるみん」や「えるぼし」認定とはどのようなものなのか?取得することでどのようなメリットがあるのか?について解説します。

実は補助金活用や資金調達において加点項目や優遇措置などを受けられる場合がありますので、当事務所が得意分野としている資金調達への好影響も交えてご説明します。

このような人にお勧め

女性や子育て世代の社員にも長く働いてほしい経営層の方

資金調達や補助金活用を検討している経営層の方

常時101人以上雇用する企業の経営層の方

くるみんとえるぼしの違い

「くるみん」も「えるぼし」もともに都道府県の労働局に届け出ることで、厚生労働大臣より認定を受けることができる制度です。しかし、目的や根拠法などが異なります。

くるみんとは?

くるみん認定とは、次世代育成支援対策推進法に基づき、「子育てサポート企業」を認定する制度です。

労働者の仕事と子育てに関する「一般事業主行動計画」と呼ばれる計画を策定した企業のうち、計画に定めた目標を達成するなど一定の要件を満たした場合に、申請を行い認定を受けることができます。

認定を受けた企業は、仕事と子育ての両立支援に積極的に取り組む企業として「くるみんマーク」を広告や名刺に表示することが可能となります。

また、より高い水準の目標の取り組みを行うことで、「プラチナくるみん認定」を受けることもできるようになります。

新たな認定制度として、「トライくるみん」も始まっております。まずは「トライくるみん」または「くるみん」の認定取得を目指し、認定取得後に「プラチナくるみん」の認定を目指す格好になります。

出典:厚生労働省ウェブサイトより(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/kurumin/index.html)

一般事業主行動計画とは?

労働者の仕事と子育ての両立を図るための雇用環境の整備や、子育てをしていない労働者も含めた多様な労働条件の整備のために、 ①計画期間 ②目標 ③目標達成のための対策及びその実施時期

を定めるものです。

従業員101人以上の企業には、行動計画の策定・届出、公表・周知が義務付けられており、100人以下の企業には努力義務とされています。 計画書のフォーマットや計画書の見本は、こちらの厚労省のサイトからダウンロード可能です。

認定を受けると、厚生労働省のウェブサイトに認定企業一覧として公開されます。

名刺や自社サイトへの認定マーク掲載等で並行してアピールすることで、顧客企業へのイメージアップや、人材採用においても優秀な社員の採用につながるなどのメリットが期待できます。

また認定に必要な目標達成のために、実施する職場改善により離職率の低下にもつながる可能性があります。

えるぼしとは?

えるぼし認定とは、女性活躍推進法に基づき、「女性の活躍を推進する企業」を認定する制度です。

女性の活躍推進に関する「一般事業主行動計画」を策定し、届出を行なった企業のうち、自社の女性活躍推進に関する取り組みの実施状況が認定基準を満たした企業が「えるぼし認定」を受けることができます。

えるぼし認定には3段階の認定が定められており、さらに3段階目より高い水準の要件を満たしている場合は、「プラチナえるぼし認定」を受けることが可能です。

女性が採用されてから仕事をしていく上で、能力を発揮しやすい職場環境であるかどうかという観点から、以下5つの評価項目が定められており、毎年公表する必要があります。

  • 採用
  • 継続就業
  • 労働時間等の働き方
  • 管理職比率
  • 多様なキャリアコース

上記のうち1~2つの基準を満たすと第一段階、3~4つの基準を満たすと第二段階、5つ全ての基準を満たすと第三段階の認定を受けることができ、段階によって認定マークの色が変わります。

出典:厚生労働省 職場情報総合サイト しょくばらぼ(https://shokuba.mhlw.go.jp/) より

くるみんの認定取得ステップ

ここからはくるみん認定の取得ステップについて大枠を解説します。実際に申請する際は厚生労働省のサイトで詳細を確認の上で、手続きを進めましょう。

認定取得に必要な行動計画の期間は2年以上5年以下である必要があり、相応の期間を要するため、認定取得を希望される際は早めに取り組みを開始しましょう。

自社の現状や労働者のニーズ把握

次のステップで行動計画を立てる必要がある為、まずは自社の「仕事と子育て」の両立に係る課題や従業員のニーズを把握しましょう。

例えば、過去五年に遡って、「子育て中の従業員の数」や「妊娠出産を機に退職した従業員がどれくらいいるか」「仕事と子育ての両立で苦労している点」などを調べてみましょう。

調べを進める中で、自社が抱えていた潜在的な課題が見えてくることと思います。

現状やニーズを踏まえて行動計画を策定

雇用環境の改善には一定期間要するため、前のステップで抽出した課題に優先順位をつけましょう。その上で、それらの課題を解決するための目標と計画期間を設定しましょう。

目標はいくつ設定しても問題ありません。可能な限り定量的な数値目標を設定することが推奨されています。

行動計画書には雛形やモデル計画書が厚生労働省のサイトに用意されているので策定の参考にしてみましょう。

くるみん認定を受けるためには、行動計画と実行内容が認定基準を満たす必要があるので、くるみん認定の基準(厚生労働省発刊のくるみん認定に係るパンフレット等で公表されています)を参考に計画を策定しましょう。

不安があれば、行動計画策定時に都道府県労働局雇用環境・均等室(部)に相談することをお勧めします。

行動計画を公表し、労働者に周知

行動計画を策定したら、概ね3ヶ月以内にその計画を公表するとともに、従業員にも周知しましょう。こちらのステップと次のステップは同じ時間軸になりますので、並行して進めましょう。

公表の方法としては、厚生労働省が運営するウェブサイト「両立支援のひろば」への掲載や自社ホームページへの掲載などが挙げられます。

従業員への周知方法としては、事業所内の見えやすい場所への掲載や備え付け、従業員への配布や電子メールでの送付、社内ネットワーク(イントラネット)への掲載などが挙げられます。

認定を取得するためには、公表および従業員へ周知した日付がわかる書類が必要になるので、以下のような書類を残しておきましょう。

  • 「両立支援ひろば」や自社ホームページに公表した日が分かる画面を印刷した書類
  • 社内イントラネットで従業員に周知した日が分かる画面を印刷した書類

行動計画を策定した旨を、都道府県労働局へ届け出

行動計画を策定したら、策定日からおおむね3ヶ月以内に「一般事業主行動計画策定・変更届」(様式第一号)を郵送、持参、電子申請のいずれかの方法で都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に届け出ましょう。

「一般事業主行動計画策定・変更届」は厚生労働省のサイトからダウンロードできます。

行動計画自体の添付は不要とされています。

行動計画の実施

目標を達成するために、行動計画に掲げた対策を実施していきましょう。

計画期間終了後、都道府県労働局へ認定申請→認定取得

行動計画を実行し、くるみん認定基準を全て満たしたら、認定取得の申請をしましょう。

くるみん認定の申請は、厚生労働省のサイトからダウンロードできる「基準適合一般事業主認定申請書」(様式第二号)に必要書類を添付して、郵送、持参、電子申請のいずれかにより、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に申請しましょう。

えるぼしの認定取得ステップ

自社の女性活躍に関する状況の把握、課題分析

まずは、自社の活躍に関する情報を分析して、自社の課題を洗い出しましょう。ここでの分析が次のステップの計画策定に大きく影響してきます。

分析のために把握すべき項目として、「管理雇用区分ごとの採用した従業員の女性割合」「管理雇用区分別の男女の平均勤続年数の差」「各月ごとの平均残業時間の状況」「管理職の女性割合」が挙げられます。

常時雇用する従業員が301人以上の事業主の場合は、「男女の賃金差異」についての状況把握が必要です。

一般事業主行動計画の策定、社内周知、外部公表

前のステップで把握した課題を踏まえて、「計画期間」「数値目標」「取組内容」「取り組みの実施時期」を盛り込んだ一般事業主行動計画を策定しましょう。一般事業主行動計画のフォーマットは厚生労働省のサイトからダウンロード可能です。

その上で、社内周知が必要です。具体的には、正社員・非正社員を問わず全ての従業員に周知する必要があり、「事業所内の見やすい場所への掲示」「電子メールでの送付」「社内イントラネットへの掲載」「書面配布」などが周知方法として挙げられます。

また外部への公表も必要であり、手法としては「厚生労働省が運営する女性の活躍推進企業データベースへの掲載」「自社ホームページへの掲載」が挙げられます。

一般事業主行動計画を策定した旨の届出

行動計画を策定したら、電子申請や郵送等により管轄の都道府県労働局に届け出ましょう。届出の書式も前述の厚生労働省のサイトよりダウンロード可能です。

取組の実施と効果測定/女性の活躍に関する情報公表

策定した一般事業主行動計画に基づき取組を行い、効果測定を行いましょう。

その上で自社の女性活躍に関する状況について、「女性の活躍推進企業データベース」や自社のホームページ等に公表しましょう。

えるぼし認定の申請

行動計画を実行し、えるぼし認定基準を満たしたら、認定取得の申請をしましょう。

くるみん認定の申請は、厚生労働省のサイトからダウンロードできる「基準適合一般事業主認定申請書」等の必要書類を、郵送、持参、電子申請のいずれかの方法で、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に提出しましょう。

資金調達におけるメリット

くるみん・えるぼし認定を取っている場合、各種行政の補助金や日本政策金融公庫の融資を受ける際に優遇措置を受けることが可能となります。

加点対象補助金

補助金は、採択される可能性を上げるための加点措置が、一定の条件を満たすことで受けられるようになっていることがあります。

当事務所で補助金申請をご支援する際にも、出来るだけ多くの加点措置を取りに行くようにご案内しています。

以下のような主要な補助金においては、くるみん認定やえるぼし認定を受けると、加点措置の対象となることが確認されています。

  • ものづくり補助金
  • 小規模事業者持続化補助金
  • 事業再構築補助金
  • 事業承継・引継ぎ補助金
  • IT導入補助金

加点対象融資

以下の日本政策金融公庫の融資を受ける際に、くるみん認定またはえるぼし認定を受けている場合、優遇金利(基本の金利より低利)で融資を受けることが可能となります。

融資制度名働き方改革推進支援資金
資金使途働き方改革実現計画を実施するために必要な設備資金および長期運転資金
(長期運転資金には、建物等の更新に伴い一時的に施設等を賃借するために必要な資金を含む)

本融資を検討する際は、日本政策金融公庫のHPを確認の上でご検討ください。

関連助成金

ここまで補助金における加点措置等を紹介してきましたが、その他にも以下二つのような関連する助成金が存在します。自社の使いたい資金使途と助成対象が合致するようであれば、こちらも併せて活用を検討してみましょう。

くるみん助成金

中小企業における、従業員の職業生活と家庭生活の両立を図るために必要な雇用環境整備を支援するものです。

以下のような経費が助成対象とされています。

職員給与 ・ 各種手当・社会保険料事業主負担金・厚生費等(役員報酬を除く)・諸謝金 ・備品費(単価50万円以上の備品を除く)・消耗品費・印刷製本費・通信運搬費・光熱水料・借料及び損料・会議費・賃金・雑役務費及び委託料

助成額:上限50万円

女性の活躍推進助成金

女性の新規採用・職域拡大を目的とした女性専用設備等の整備費用を支援するものです。

以下のような設備を整備する経費が助成対象とされています。

・トイレ・洗面所・更衣室・ロッカー・休憩室・シャワー室・洗濯機・仮眠室・ベビールーム(子ども連れで出勤した場合の授乳/オムツ替えなどのスペース)・工事現場に設置される仮設トイレ

助成額:上限500万円(助成率3分の2)

まとめ

くるみん認定やえるぼし認定の取り方や、認定取得後の資金調達におけるメリットについて解説しました。

認定取得は一定の労力を要しますが、取得の過程で得られる企業環境への好影響や取得による定性的なメリットや資金調達のような定量的に見えるメリットなどを考えると、認定取得の努力をする価値はあると考えます。

当事務所では、本記事で紹介したような資金調達のご支援をしています。

補助金等を活用したいが、自分達だけで採択される可能性がある水準の申請資料を作れるか不安であれば、ぜひ当事務所にご相談ください。

実績豊富な中小企業診断士が全力でご支援します。


川元 芳晃(かわもと よしあき)

巣鴨コンサルティング代表。中小企業診断士(経営コンサルタントの国家資格)。 金融機関とベンチャー企業での経営企画/マーケティング部門での勤務経験から、中小・ベンチャー企業の資金調達/資金繰り改善/デジタルマーケティングを駆使した集客改善支援を得意とする。