最終更新日 2024年10月27日  

中小企業診断士の川元です。

「中期経営計画を作りたいが、どう作れば良いのか分からない」

そんなお悩みを抱えていませんか?

経営者が中期的に会社の変革を目指す場合に、必要となってくる中期経営計画ですが、頻繁に作成するものではないため、作成経験のある社員が少なく要因で作りたくても中々作れないという企業様も多いことと思います。

今回はそのようなお悩みに応えるため、中期経営計画の作り方から作成時の注意点等を解説します。

こんな方におすすめ

資金調達のため、中期経営計画を作成したい中小企業やベンチャー企業の経営者様

中期的に経営を変革したい中小企業やベンチャー企業の経営者様

中期経営計画とは?

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中期経営計画の概要

中期経営計画とは、明確な定義はありませんが、多くの場合3〜5ヵ年の経営計画のことを指します。

より具体的に記すと、3〜5ヵ年をかけて目指す事業の方向性や、理想の会社の姿を可視化し、それを実現するための具体的な手段を定めた計画書といえます。

内容や作り方は企業によって様々であり、長期的な(5〜10ヵ年など)における在りたい姿を定め、そこに至るための中期的なステップとして直近3~5年間の計画を立てるなど、企業として在りたい姿をどのように見据えているかによって作り方は異なります。

そのため、作り方の正解は一つということは決してありません。

本記事では、あくまで一つの考え方として当事務所が推奨する経営計画の作り方の一例をお示しします。

中期経営計画を作る目的

中期経営経営計画の作成は自社や社内外の関係者に対して、非常に多くのメリットをもたらします。

特に「中期経営計画を作成し社内外の関係者に経営の方向性を示すため」には非常に有効であり、以下のような目的で作成する企業様が多く見られます。

  • 経営者が考える経営の方向性や目標を社員と共有し、円滑に経営を推進するため
  • 金融機関やベンチャーキャピタル(VC)などから資金調達を行うため
  • 補助金や助成金を活用して、設備投資やマーケティング投資を実施するため
  • 株主に対して今後の事業戦略を説明し、現経営者に引き続き会社経営を任せてもらうため

中期経営計画に必要な要素

中期経営計画を実際に作る前に、どのような論点を含めることが望ましいのか大まかに把握しておきましょう。

前述の通り企業によって内容は様々ですが、「自社の現状と理想の差分」「理想の状態になるための実行計画」「設定した数値目標」の三点は読み手に対し計画の内容理解を促すために、計画書内で押さえておくべきであると考えられます。

自社の現状と理想の差分

読み手に、「自社がどのような計画を、何を目的として立てているのか」を理解してもらうために、3〜5ヵ年後の会社の理想とする姿と、自社の現状を分析した上で端的に述べ、差分を明確にすることが肝要です。

中期経営計画は、ここで示された差分を埋めるための計画書であるとも言えます。

理想の状態になるための実行計画

理想の企業状態を思い描いても、そこに至るまでの手段が示されていなければ、読み手は3〜5年後に理想の経営状態に至ると信じないでしょう。

また社員の方も、経営者が考える理想の企業状態を作り出すために動き始めることが難しいでしょう。

そのため、中期経営計画の中では、理想の状態になるために「誰が、何を、どのような時間軸で行なっていくのか」を明示することが肝要となります。

設定した数値目標

理想の会社の状態をより具体的に想像して貰うために、その状態に到達する3〜5年後にどのような定量目標を定めているのかを明示することは肝要です。

定量目標として記載するべきものの例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 売上高や営業利益/純利益額としてどの程度になることを思い描いているのか
  • どのような顧客を何社・何名ほど獲得するのか

中期経営計画の作り方

内部環境/外部環境分析

経営計画を策定する上では、現状の自社の事業環境を分析・把握することが非常に重要です。

まずは自社の内部環境を分析することと、自社が現在存在している市場環境や今後進出する市場の環境を分析することから始めましょう。

分析の仕方としては、SWOT分析を徹底的に行うことをおすすめします。
(SWOT分析の詳細は以下のページを是非ご参照ください。)

SWOT分析とは、内部環境(自社)の強みと弱み/外部環境(市場)の機会と脅威を分析する手法です。有名な手法なので聞いたことがある方も多くいらっしゃると思います。

銀行等の金融機関では、融資先の現状を把握するためにSWOT分析を実施することが多く、実戦的な現状分析に非常に長けた手法であるといえます。

SWOT分析を行うことで、自分の会社の武器や市場に眠るチャンスが可視化されていき、事業計画を考える上で非常に重要な手掛かりとなります。

自社の在りたい姿を決める

SWOT分析を行った上で、先ほどの参照ページにあるクロスSWOT分析まで行うと、自社としてどのような事業の方向性が考えられるかが、より見えやすくなってきます。

「自社の強みである〇〇をより強化して、市場のチャンスを捉えてXXの商売を拡大する」と言ったように、事業の方向性案がいくつか浮かび上がってくることと思います。

その上で、経営者様が志向する方向性と合致する案を選択し、その方向性で進んだ場合の3~5年後の自社の姿を書面にまとめてみることをおすすめします。

数値計画を定める

自社の理想とする3〜5年後の姿を定めることが出来たら、その状態になった時に「どのような財務状況や顧客獲得状況」となるかを検討しましょう。

具体的には、「AサービスでX社のような顧客を3年間で20社新規に獲得し、売上○百万円/営業利益○百万円の成長させる」といったような考え方で3年後のPLなどを明示することが望ましいです。

数値計画を示すことで、金融機関やベンチャーキャピタルなどはいくら皆様の会社にお金を出すことが出来るかを判断しやすくなります。

目標を達成するための行動計画を定める

3〜5年後の在りたい姿と数値目標を定めたら、現状との差分を埋めるために実施する行動計画を立てていきましょう。

在りたい姿を定める際に、クロスSWOT分析を行っていれば、「目標と達成するために何を伸ばすのか?」や「どのような弱みを克服するのか?」などが見えやすい状態になっていることと思います。

分析結果を参考に、具体的にどの部署でどんなことを行えば「その強みが伸びるのか?」などを検討し、社員の皆様が「どんな動き」を「いつ行っていくべき」なのかを明確にして明文化していきましょう。

中期経営計画作成時の注意点

社員との共有

中期経営計画は前述のとおり、社員に理解されない限り絵に描いた餅として実行されることなく形骸化してしまいます。

社員が理解して、計画に沿った行動をしてくれるようにしっかりと説明する機会を設けましょう。

企業理念との整合

企業理念とミスマッチな中期経営計画を立ててしまうと、会社として今まで培ってきた文化を薄れさせてしまい、理念に共感してくれていた社員の離脱などの事態を引き起こしかねません。

そこまでの事態に陥らない場合においても、理念と計画の乖離に悩みながら社員の皆様は業務にあたることになり、中途半端な結果に終わってしまう可能性が高まります。

極端な現実との乖離

理想を描き過ぎるあまり、現実的に3〜5ヵ年での到達は到底不可能な目標を立ててしまうと、社員の士気下落に繋がり、社員の離脱を引き起こす可能性があります。

さらに金融機関の方々などにお見せしても、計画に確からしさがないとされ、殆ど信用されずに資金調達にも寄与しない可能性が出てきます。

現状から考えて、難しさはあるが不可能ではない水準の理想像や目標設定を行うようにしましょう。

まとめ

今回は中期経営計画の作り方をここまでお伝えしてきました。

中期経営計画は、経営者が考える理想の企業状態に近づけるためのロードマップとして、非常に重要な存在ですが、その分作成には多大な工数と関係各所への説明責任が伴います。

そのため、経営者が1人で思い悩みながら作ることは非常に負担が大きく、作成に着手しても頓挫してしまうケースも少なくありません。

ご自身で作るには時間も知見も足りないと感じる中小企業やベンチャー企業の経営者様においては、外部の支援者に協力を仰ぎながら作成することも少なくありません。

当事務所も経営計画策定のご支援をしておりますので、もし外部機関に協力を仰ぐことを御検討される際には、選択肢の一つとして当事務所を入れていただたら、非常にありがたく思います。

在籍する金融機関出身の経営計画策定支援の経験が豊富な中小企業診断士が、全力で経営者様の希望実現に資する計画策定をサポートいたします。


川元 芳晃(かわもと よしあき)

巣鴨コンサルティング代表。中小企業診断士(経営コンサルタントの国家資格)。 金融機関とベンチャー企業での経営企画/マーケティング部門での勤務経験から、中小・ベンチャー企業の資金調達/資金繰り改善/デジタルマーケティングを駆使した集客改善支援を得意とする。